この記事の要点
一番のポイントは、議事録案を作るための職員稼働をほぼゼロに近づけることです。
原村役場では、庁内で作成する議事録について、従来の「話者分離形式」から、原則として「論点整理形式」へ移行する運用に見直しました。 発言者ごとに記録を整える前提をやめ、AIが論点整理形式の案を作成し、職員は内容確認と判断に集中する形へ切り替えます。
今回のDXは、単に新しいツールを導入する取組ではありません。 「発言順に正確に並べる議事録」を前提にすると、文字起こしの後も、話者確認、整文、編集に多くの時間が残ります。 そこで、議事録を「会議後に使える論点整理資料」として作る前提へ見直します。
これまで
職員が発言者を追い、発言順の記録を整文・編集して仕上げる。
見直し後
AIが論点整理形式の議事録案を作成し、職員は確認・判断に集中する。
ここが生産性向上のポイントです
既存の作業を少しずつ効率化するだけではなく、「そもそも話者分離形式で作る必要があるのか」から思い切って見直します。 業務の前提を変えることで、AIが担える部分が広がり、職員の作成作業を大きく減らせます。
一番伝えたいこと
見直すのは、ツールではなく議事録作成の前提です。 これまで職員が時間を使っていたのは、会議内容を理解することだけではありません。 発言者を確認し、発言順に文章を整え、読みやすい形に編集する作業にも大きな時間がかかっていました。
話者分離をやめ、論点整理へ寄せる理由
話者分離形式は、人が発言者を追いながら整える作業が残りやすい形式です。 一方、論点整理形式は、結論、決定事項、課題、今後の対応などに再構成する形式のため、生成AIが得意な「整理・再構成・文章化」を活かしやすくなります。 その結果、議事録案を作るための職員稼働をほぼゼロに近づけ、職員は内容の確認と最終判断に時間を使えるようになります。
今回の見直しで重視した点
- 議事録の目的を、発言の整理から「判断・対応に使う資料」へ近づけること
- 作成形式を、話者分離形式から論点整理形式へ見直すこと
- AIが案を作成し、職員は確認・判断を担う役割分担にすること
- 必要に応じて録音・動画等により、発言内容を確認できるようにすること
何が変わらないか
AIが作成した内容をそのまま確定するものではありません。 AIが担うのは議事録案の整理です。 会議内容の確認、最終的な判断、記録としての責任は、これまでどおり職員が担います。
見直しの背景
自治体では、審議会、委員会、協議会、組合関係の会議、庁内会議など、多くの会議が日常的に行われています。 これまで多くの議事録は、発言者ごとに発言内容を記録する「話者分離形式」で作成されてきました。
従来の話者分離形式
「A委員:○○」「B課長:○○」というように、発言者と発言内容を順番に記録する形式です。
この形式は発言の流れを追いやすい一方で、文字起こしツールを使っても、職員に次の作業が残ります。
- 発言者を確認して入力する作業
- 同時発言や聞き取りにくい部分の修正
- 「えー」「あの」など、議事録に不要な発言の整理
- 長い発言を読みやすい文章に整える作業
- 会議全体から結論や課題を探し出す作業
課題は、ツールではなく形式に残ります
音声を文字にするだけでは、議事録を完成させる作業はなくなりません。 従来の形式を前提にしたままでは、職員は発言者確認と整文に時間を使い続けることになります。 そこで、議事録の形式そのものを見直します。
変更内容
原村役場では、議事録作成の基本方針を次のように見直します。 ただし、法令、条例、規程等により発言記録が必要な会議や、会議の性質上、従来の形式が適切な場合は、必要な記録方法を個別に判断します。
表は横にスクロールできます。
| 項目 | 従来 | 見直し後 |
|---|---|---|
| 業務の前提 | 人が発言内容を整理して完成させる | AIが論点整理案を作成し、人が確認・判断する |
| 議事録形式 | 話者分離形式 | 論点整理形式 |
| 成果物の目的 | 発言記録を残す | 判断・対応に使える業務資料にする |
| 職員の時間の使い方 | 発言者確認、整文、編集作業 | 内容確認、判断、次の対応 |
| 作成時間の目安 | 会議後の整文・編集に半日程度かかる場合がある | 標準的な庁内会議では、議事録案の作成作業をほぼゼロに近づけることを目指す |
| 情報の見え方 | 発言順に並ぶため、結論や課題を探す必要がある | 結論、決定事項、課題、今後の対応を把握しやすい |
確認・判断は職員が行います
「ほぼゼロに近づける」のは、議事録案を作成するための整文・編集作業です。 会議内容の確認、決定事項の妥当性確認、公開してよい情報かどうかの判断は、職員が責任を持って行います。
スマートフォン向け要約
従来:発言順の記録を人が整えるため、議事録案を作る作業が多く残る。
見直し後:AIが論点整理形式の案を作成し、職員は内容確認と判断に集中する。
論点整理形式とは
論点整理形式とは、会議で話された内容を単に短く要約するものではありません。 会議の内容を、業務で使いやすいように次のような項目で整理する形式です。
- 論点
- 背景・現状
- 議論内容
- 結果・決定事項
- 課題・懸念事項
- 今後の対応
資料掲載例:同じ内容でも、見え方が変わります
「議事録運用の見直し資料」に掲載している例を、本文用に一部抜粋・整理したものです。 同じ会議内容でも、話者分離形式では発言を順番に追う必要がありますが、論点整理形式では、結論、課題、今後の対応がすぐに分かります。
現状:話者分離形式
発言順に読むため、結論や課題を読み手が探す必要があります。
A委員長:地域活性化起業人はどのような人を考えていますか。
B室長:企業からの派遣と副業で行う2パターンがあり、今回は企業からの派遣を想定しています。人材としてはDXを推進できる人を考えています。
A委員長:専任ですか。
B室長:制度的に月の半数を原村に来て働いてもらうという要件です。
A委員長:地元の人を募集するものですか。
今後:論点整理形式
論点ごとに再構成するため、業務で使う情報をすぐ確認できます。
論点:地域活性化起業人制度の活用
背景・現状:村内で確保しにくい専門人材、とくにDX推進人材の確保が背景にあります。
議論内容:企業派遣型を想定し、月の半分程度を原村で勤務する要件があること、旅費を含めた予算枠内で適任者を確保する必要があることが確認されました。
結果・決定事項:DX推進人材の確保を目的に、企業派遣型で活用を図る方針が確認されました。
今後の対応:国のプラットフォーム等を活用し、企業派遣型人材のマッチングを進めます。
違いの本質
話者分離形式は「誰が何を言ったか」を並べる記録です。 論点整理形式は、同じ内容を「何が論点で、何が決まり、次に何をするか」に組み替える記録です。 この形に変えることで、AIが議事録案を作りやすくなり、職員は発言順の編集ではなく確認と判断に集中できます。
重要な意見、決定事項、担当、今後の対応を整理することで、会議に参加していない職員でも、何が議論され、何が決まり、今後何をすべきかを把握しやすくなります。
AIと職員の役割分担
「AIに業務を寄せる」とは、AIに判断を任せるという意味ではありません。 AIが得意な整理、再構成、文章化を活かせるように業務手順を見直し、職員は内容の確認、判断、次の対応に集中するという考え方です。
- 会議音声を文字起こしする
- 文字起こし結果を生成AIに入力する
- 生成AIが論点整理形式で議事録案を作成する
- 職員が内容を確認し、必要な修正を行う
確認を前提に運用します
文字起こし結果をもとに生成AIで議事録案を作成し、担当職員が会議内容、決定事項、表現の妥当性を確認・修正したうえで、記録として整理します。
個人情報・機密情報の取扱い
生成AIの利用にあたっては、個人情報や機密情報の取扱いに留意し、庁内の利用ルールに基づいて運用します。
期待される効果と確認方法
最大の効果は、職員が「議事録を作る時間」から解放され、「内容を確認し、次の対応を判断する時間」に集中できることです。 今回の見直しにより、次のような効果が期待されます。
1. 議事録案作成の稼働をほぼゼロに近づける
話者確認、整文、発言順の編集を職員が抱え込むのではなく、AIが論点整理形式の案を作成します。 職員はその案を確認し、必要な修正と判断に集中できます。
2. 決定事項や今後の対応を把握しやすくする
会議の目的、議論の流れ、決定事項、今後の対応が分かりやすくなり、実際の業務に活用しやすくなります。
3. 会議後の情報共有の効率化
会議に参加していない職員や関係者も、短時間で内容を把握しやすくなり、庁内での情報共有や意思決定のスピード向上につながります。
4. 持続可能な行政運営への対応
人が行うべき業務と、AIなどのデジタル技術に任せる業務を整理し、限られた職員数でも行政サービスを維持しやすくします。
記録としての確認方法
論点整理形式に移行した場合でも、会議内容の確認ができなくなるわけではありません。 必要に応じて、録音データや動画データにより、発言内容を確認できるようにします。
補足
録音・動画データは、必要な範囲で、庁内規程等に基づき適切に管理します。 議事録は、会議内容を業務で活用するための資料として整理し、発言そのものの確認が必要な場合は、録音データや動画データを参照するという考え方です。
他自治体でも検討しやすい取組です
今回の取組は、特別な専用システムに限らず検討しやすい取組です。 ポイントは高価な仕組みを入れることではなく、議事録を「話者ごとの記録」から「論点ごとの整理」へ切り替えることです。 各自治体の規程、情報セキュリティ方針、会議の性質に応じた確認は必要ですが、基本的には次の環境があれば実施を検討できます。
- 会議音声を録音する環境
- 文字起こしツール
- 生成AI
- 論点整理形式に変換するための庁内ルール
- 職員による確認体制
特に、会議が多く、議事録作成に大きな時間を使っている自治体では、既存の作り方を思い切って見直すだけで、職員負担の軽減と情報共有の質の向上につながる可能性があります。
今後について
原村役場では、今後も生成AIやデジタル技術を活用しながら、庁内業務の見直しを進めていきます。 人口減少社会においても、持続可能な行政運営を行うためには、これまでの業務の進め方を前提から見直すことが必要です。
原村役場が目指すこと
今回の見直しは、AIを使うこと自体を目的とするものではありません。 既存のやり方を前提にして少しだけ効率化するのではなく、業務の作り方を思い切って見直し、AIが担える部分はAIに寄せるDXです。 住民の皆さんにとって、会議の結果や今後の対応がより分かりやすく伝わる議事録を目指します。
論点整理プロンプト例
よければご利用ください
以下が論点整理プロンプトです。よければご利用ください。会議の性質や庁内ルールに合わせて、組織名、会議資料、確認方法などを調整して活用できます。
生成AIが作成した内容は、そのまま確定せず、会議内容、決定事項、個人情報・機密情報の取扱いを職員が確認したうえで使用してください。
論点整理プロンプト全文を開く
あなたは、{{ここに組織名称}}が外部公開する会議の議事録を作成する編集担当です。
以下の入力データ(話者分離された文字起こし、必要に応じて会議資料)をもとに、公開用の行政文書として適切な「論点整理型の議事録」を作成してください。
【目的】
- 話者ごとの逐語録ではなく、議題・論点ごとに整理された議事録にする
- 内容は極力省略せず、実質的な情報、判断理由、懸念、確認事項、対応方針、保留事項をできるだけ残す
- 一方で、言いよどみ、相づち、重複、言い直し、脱線、意味のない雑談は削除する
- 外部公開を前提に、第三者が読んでも理解できるよう、明瞭で中立的な文書に整える
- 入力にない事実は補わず、推測で書かない
【前提条件】
- 議事録は外部公開用である
- 「speaker_0」「speaker_1」などの話者ラベルは原則として出力しない
- 会議資料がある場合は、資料内容を参照して議題名、制度名、施設名、地名、数値、固有名詞を補正・補完してよい
- ただし、文字起こしや資料にない事実は追加しない
- 外部公開に不要な個人情報や機微情報が含まれる場合は、意味を損なわない範囲で一般化または伏せる
- 例:個人の電話番号、個人メールアドレス、詳細住所、過度に私的な事情
- 一方で、議論の理解に必要な役職名、所属、地名、施設名、制度名などは残す
- 話者別整理はしないが、議論の理解に不可欠な場合のみ、「事務局」「担当課」「参加者」「関係機関」など役割レベルの表現で整理してよい
【編集方針】
1. 発言順の羅列ではなく、内容を読み解いて「論点ごと」に再構成する
2. 会議資料があれば、まず資料から議題や論点の骨子を把握し、文字起こしをそこに対応づけて整理する
3. 会議全体の概要を最初に示し、その後に論点ごとの整理を行う
4. 各論点では、次の観点をできる限り含める
- 論点
- 背景・現状
- 会議で確認された事実や議論の内容
- 結果・決定事項
- 課題・懸念・未解決事項
- 今後の対応(担当や期限が読み取れる場合のみ)
5. 会議中に複数箇所で出た同じ話題は、まとめて統合する
6. 数値、時期、場所、対象、条件、比較、時系列、実施方法などの具体情報はできるだけ落とさない
7. 口語表現は公開文書として自然な文書語に整える
8. 誤変換と思われる箇所は、文脈から妥当な範囲で補正する
9. それでも意味が確定できない箇所は、無理に断定せず「[聞き取り不明]」「[要確認]」と明示する
10. 単純な要約で短くしすぎず、議論の経過や判断理由が分かる程度の情報量を確保する
11. 賛否や複数意見がある場合は、一つに潰さず、争点や見解の違いが分かるように整理する
12. 元の発言が断片的でも、前後の文脈をつないで意味が通るように再構成する
13. 会議資料と文字起こしの内容に差異がある場合は、勝手に統一せず、「要確認事項」として明示する
【重要】
- 内容を極力省略しないこと
- ただし、不要な内容(相づち、重複、脱線、意味のない雑談)は削除すること
- 「短くまとめること」よりも、「重要な情報を落とさず整理すること」を優先すること
- 1つの論点を1〜2文で雑に済ませず、必要な具体性を持たせること
- 発言の表現を整えることはよいが、意味を弱めたり一般化しすぎたりしないこと
【出力形式】
以下の形式で作成してください。
不明な項目は無理に埋めず、分からない場合は「不明」または省略可とします。
# 会議概要
- 会議名:
- 日時:
- 場所:
- 出席者:
- 使用資料:
- 会議の要旨:
(会議全体を3〜6文程度で、具体的にまとめる)
# 論点整理
## 論点1:[論点名]
### 背景・現状
(必要な背景、現状認識、前提条件を整理して記載)
### 議論内容
(会議で出た説明、確認事項、意見、懸念、選択肢、判断理由などを、内容が分かるように整理して記載)
### 結果・決定事項
(決まったこと、合意したこと、確認されたことを明記)
### 課題・懸念事項
(残っている問題、追加確認が必要な点、リスクなどを記載)
### 今後の対応
(誰が、何を、いつまでに行うかが読み取れる場合は記載)
## 論点2:[論点名]
### 背景・現状
### 議論内容
### 結果・決定事項
### 課題・懸念事項
### 今後の対応
## 論点3:[論点名]
### 背景・現状
### 議論内容
### 結果・決定事項
### 課題・懸念事項
### 今後の対応
# 決定事項一覧
- (会議全体で決まった事項を簡潔に列挙)
# 継続課題一覧
- (引き続き検討・確認が必要な事項を列挙)
# 要確認箇所
- (聞き取り不明、資料不足、表現の確定が難しい点を列挙)
【文体】
- 行政文書として自然で落ち着いた文体にする
- 中立的で説明責任を果たせる表現にする
- 断定できないことは断定しない
- 過度に簡略化せず、しかし逐語録にはしない
- 外部公開を前提に、第三者が読んで理解できる表現にする
【禁止事項】
- speaker_0、speaker_1 などの話者ラベルをそのまま残すこと
- 発言を単純に短文化して並べるだけの出力
- 入力にない事実の創作
- 不明点を勝手に補完して断定すること
- 重要な判断理由や懸念点の過度な省略
- 読みやすさのために事実関係を変えてしまうこと
【出力前チェック】
出力前に、次の観点で自分の原稿を確認してから完成稿を出してください。
- 重要な論点が落ちていないか
- 数値、場所、対象、時期、判断理由が不必要に削られていないか
- 決定事項と継続課題が分かれているか
- 話者ラベルが残っていないか
- 推測や創作が紛れ込んでいないか
- 公開文書として不要な個人情報が残っていないか
【入力】
■文字起こしデータ
{{ここに話者分離された文字起こしを貼り付ける}}
■会議資料
{{ここに会議資料を貼り付ける。なければ「なし」と記載}}
