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平成22年度 広報はら2月号

更新日2021年3月11日

平成22年度広報はら2月号村長きよしの山麓朴談vol.42

熊を殺してはいけない。最初は何のことだか解りませんでした。大体人里に出没して、人間様が大切に育てた農作物を荒らすばかりか、人をも襲う有害無益の熊などは殺されて当然と思っていました。

ところがそうでもないらしいのです。90%植物食の熊は種子散布者となって、豊かな森の更新を行い、森林に棲息する動物を含めた森林生態系全体の保全に繋がっているというのです。自然界のバランスとは実に厄介なものです。近年跋扈(ばっこ)の有害鳥獣もそうです。自然界の何かが狂ったのです。人間の都合にばかりはいきません。

といって傍観は許されません。防除駆除が必要です。手入れされない山林、人間が生産活動を止めてしまった森林は、その環境に適した野生生物の棲家となり、数が殖えすぎたり季節的に食物が足りなくなったりすると餌を求めて、人間の領域に出没することになります。人間との鬩(せめ)ぎ合いです。鹿、猿、猪、熊、小獣、鳥、雀、その他。殖えすぎた数を減らすのが手取り早いのですが、現在狩猟従事者は減る一方で、若い人には人気がありません。次なる手は防護柵ですが、中への出入りや通過を考えると、なかなかの難物です。それが車でとなると一層のことです。生活圏と重なる原村では、知恵の絞りどころとなります。

絶滅が危惧されるというと、一寸不思議にも思われますが、熊の個体数は減っているそうです。減っているはずの熊の出没情報が何故増えているのでしょうか。熊は森林に棲む大型獣ですが、性格は臆病で人間とは接触したくないと考えているはずです。彼等の棲家は広葉樹林で、落葉松植林地の回避、赤松林への強い選択性、林縁部への強い執着性が解っています。一般的に夏の3ヶ月が林内の餌が不足していますので、殺されるかもしれない禁を冒して、人間の領域に出没することになります。餌が不足するのは個体数の増加によるものではなく、植林の進行による針葉樹林化の要素が大きいといいます。秋口以後は冬眠に具えて、体に脂肪を蓄える必要があるのですが、広葉樹が少なければその実の堅果類がありません。豊かな森で静かに暮らしたい森の住者は危険を冒して人里に出没して、人間と軋轢を生じることになります。肉食獣でない彼等に人を襲う性質はないのですが、急に驚いたり、パニックになれば、保身の術に出るのです。

殺された子連れ熊の親熊は酷く痩せていたとはよく聞く話ですが、哀れを誘います。絶滅寸前の熊を守ろうとは兵庫県武庫東中学校から起きた運動ですが、日本の山林をこれ以上植林で針葉樹林化せず、人工林は3割程度として団栗など実のなる豊かな森を、取り戻そうしています。水源の涵養、山崩れや洪水の防止、生物多様性や地球温暖化防止からも有用です。原村でも列状間伐後は広葉樹を植えています。

私達は生物多様性とうまく付き合い、この地球を豊かに後世に伝えて行かなければなりません。

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